百代は一つ咳払いをすると、先程担任と相談していた内容を少し自慢げに話し始めた。
「喜びなさい、担任と話をつけてきたわ。放課後には使ってない教室が一つあるためそこを使っても良いそうよ」
百代の話が、俺にはよく分からない。けれど嫌な予感は徐々に大きくなってきた。
「言っている内容がよくわからないんだが」
「昨日言ったでしょ。あなたを監視するって」
やっぱりか、思わず額に手を当ててうなだれる。
まあ、百代に捕まった時点でその話に戻るのは目に見えていたのだが。
「教室を使ってよいと言われたそうだが、お前そこで何をするつもりなんだ?」
俺のことを監視するなどと言ってはいたが——まさか俺をその部屋に閉じ込める訳ではないだろう。
「いろいろ考えたんだけどね。ついに妙案が浮かんだのよ。あなたの監視と私のやりたいこと二つを実現することが」
俺の意思はそこにはないのかと思わず突っ込みたくはなるのだが。
「私はね、この星で超自然的現象とか超常現象が待ち受けていると思っていた。だけどそんなことはあまり起きないじゃない」
熱く語りだした百代だが、その言っている内容には俺は一度も遭遇したことはない。
そして、そんなことはこれからもないだろう。
「だから、こちらからアプローチすることにしたの」
アプローチ?
「そうよ、世の中の超常現象を見つけ、解決していくの。私とあなたで」
「……」
まあ当然のように百代の言葉には俺も含まれているわけだが、ここで一つ疑問が残る。
「その内容でよく、担任の許可が下りたな」
自分の率直な疑問をぶつけたわけだが、百代は怪訝な表情をしていた。
「そんなこと素直に言えば許可が下りる訳ないでしょう」
「学業に専念するために空き部屋を使いたいと伝えたら喜んで貸してくれたわ」
うん、すごい純粋な目をしている。俺にはできないな。罪悪感を感じてしまう。まあ正常な感覚だろう。
「とりあえず、その部屋に行ってみましょう。しばらく使ってない部屋みたいだから手入れも必要だろうから」
「俺に拒否権はないのか?」
百代は周りの部活などに向かう生徒と俺を見比べながら、「あんた、どうせ暇でしょ」と言った。
「そうではあるが」
その通り暇だから、なんだかんだ否定できない自分がいる。
「まあ、そういう意味では私も暇よ」
百代が少しばかり寂し気な表情をみせたからか、それ以上の反論はしようとい
う気が起きなかった。
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