【Novels】月日は百代の祝賀にて 第36話

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 自宅に到着した後、夕食を食べ、入浴を済ませた後リビングで涼んでいると、最近流行りのテレビゲームでの対戦をせがんでくる妹と一勝負を受けた。
 逃がさないようにしがみついてくる妹を引きはがして自身の部屋に戻ると、本日担任から出された宿題に取り掛かった。
 普段の俺のありきたりな行動を終えた後は、明日の学校の準備も手短に布団をかぶる。
 眠りにつくまでの間、何気なく天井を見つめていると下校時のことを思い出した。
『百代さんと私が同じような生い立ちだったらどう思いますか』そう言った海端の言葉が思い出される。どういう意味かは理解できなかったが、少し心がもやもやする。
 めでたく入学した学校で、まさしく「理想の美少女」という人物とお近づきになれたと大いに浮かれていたのに……一抹の不安が頭をよぎる。
「同類ではないとは思いたいが」
 類は友を呼ぶ、とのことわざ通りなら百代は海端の本質に気付き勧誘したのかもしれない。
『それは、小綬、あなたよ』
 今までに人生を思いつく限り振り返ってみても、俺は一般的な常識人だとは思う——あれこれ考えていると、余計眠れなくなりそうだ。大丈夫、俺はそっち側の人間じゃない。
 正直あまり寝つきが良い状態ではないが、これ以上考えるのを辞めよう。答えはそう簡単に出そうにないだろうから。

 翌朝、学校へはいつもより一五分程早く自身のクラスに着いた。昨夜は普段より早い時間に布団に入ったおかげか、考えていたよりは寝つきが良かった。今朝の俺は体調万全でも気分が良かったクラスメイトと挨拶を交わしていた。
 そんな良い気分で自身のクラスに入ると俺と鏡合わせのように上機嫌な百代の顔が目に入った。
「今日は早いじゃない」
「百代も珍しいな」
 俺の軽い皮肉にも百代は気にせず満面の笑みを返してきた。
 そして彼女の上機嫌の理由は、俺が聞くより早く百代が捲し立ててきた。
「今日から私たちの活動を本格化するわ」
「……」
「まさか、先に帰ろうなんて考えてないわよね?」
 俺が黙って窓から相らを眺めていると、他にも自身の活動プランなどを口上してきた。
 まあ、放課後に特段予定はない訳で、皆が目標に向かって打ち込む中で、自分にも何かしらの行動理由ができたというのは安心できる。それに準備室を自由に使えるというのはこれからの学校生活でも魅力的だ。とりあえず今は百代にとって意中の返事を返しておこう。

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