朝のホームルームから授業後の放課後までに百代は休み時間ごとに教室からいなくっていた。なにやら鞄から取り出してぶつぶつ言ったり、一人で納得したりしていたのでとりあえずあまり関わらないようにしていた。
そして放課後になると「小綬、先に行ってるわよ」と、言い残し教室を出ていった。
百代が教室を出た後は、のんびり鼻歌交じりに鞄に教科書を片付けていると、少しばかりの怪訝な表情が読み取れる米登がおもむろに話しかけてきた。
「小綬さ……、掲示板に張られているポスターを見たか?」
「掲示板? ポスター?」
「渡り廊下に貼ってあるやつだよ、まあ怪文書のような、うん、怪文書だな」
米登の真意がいまいちよく分からないから、同じような表情を互いに見合わせる。
「もしかして……百代かお前が貼ったんじゃないかと思ってさ」
「俺か百代?」
「そうか……まあ一度見てみればわかると思うが」
そう言い残すと米登は俺の背中を軽くたたいて自身の部活に向かっていった。
米登の言っていたことが少し引っかかる、まあ、図書準備室に向かうついでに見てくるか。
鞄を抱えて渡り廊下まで向かうと先ほど話題に上がった、部活紹介の紙が所狭と貼られた昔ながらの学内掲示板が見えてきた。
それぞれの熱い思いを一枚の紙に記し、将来有望な人材を獲得しようと意気込んでいる。
米登の言うような怪文書みたいなものとはどんなものかと若干期待をしつつも、それらしきものは見当たらない。
入学以来、既に見慣れた光景だが追って端まで眺めていくと——お手本の様な二度見を繰り出してしまった。掲示板の上に巻物のようなものがぶら下がっている。
背伸びをしてそれに手を伸ばし、結ばれた紐を解き中を開いてみた。
「……」
筆しかなしえない抑揚のきいた達筆な字が所狭しと書かれている。手書き文字特有の見づらさはあるが、この独特な字体は最近よく見るものだ。
「俺の学校生活が……」
廊下の端まで届くほど読み進めるにつれて軽いめまいを覚えるような内容が書かれている。活動場所は最後に明記されていたが、幸いにも俺の名前が書かれていなかったことは僥倖だ。
【Novels】月日は百代の祝賀にて 第37話

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