炬燵とのやり取りを終えた俺は百代と海端に視線を向ける。百代は俺や炬燵、海端を眺めながらなぜか満足げにうなずいている。ただ、俺の横に座る海端は俯き加減に丸くなっている。
「それはそうとして、炬燵はどうしてここにいるんだ?」
「それは私も気になっていたわ。……どうして私たちがここにいるってわかったの?」
俺としては炬燵がここに来た理由を百代が知っていると思い混んでいたものだから、その返答は意外だった。
「炬燵、お前掲示板に張り出された巻物の様なものを見てきたのか?」
「巻物?」
「そうよ」
「うん、あのよくわからないことが書いてあったものかい?」
「いまちょっとムカついたわ」
百代が机に身を乗り出して素直にぶつけた言葉を、当の炬燵はきょとんとした表情を浮かべ、百代はさらなるいらだちを見せている。
「あなた、私がここに来た後、分も待たずにここに来たじゃない。私が言うのもあれだけど、全てを読み理解した上でこんなに早くここに辿り着くかしら」
百代が海端と俺を交互に見るが、もちろん俺は何も伝えてないし、海端も首を横に振っている。
「……そうだね、少し長くなるけれど問題はないかい?」
授業が終わった後、僕は何気なく教室を出たんだ。そうしたら百代さんが何やら楽気なステップを踏んでいてね、僕も同じようにステップを踏んで付いたいった訳さ」
炬燵の言葉を聞いた俺と海端の視線に百代の顔が若干引きつる。
「いつの間にかここにいたというわけだよ」
誇らしげな笑顔を浮かべる炬燵。悪気とかそういうのではなく、全く何も考えずに本能のままここに来たのだろう。
「そういうことらしいぞ」
前ばかり見てちゃんと後ろを確認しないからこうなるんだぞ、俺は呆れと哀れみを含めた表情を百代に向けた。
「う、うるさいわね! 私の背中に目がある訳じゃないんだからしょうがないじゃない!」
百代が慌てて言い訳している横で炬燵が両手を広げ、よくあるジェスチャーで感情を表現している。
*
「僕もこの会合に参加してもいいかな?」
「……なんでそう思ったんだ?」
炬燵は悪い奴ではなさそうだけど、突然来ていきなり入部を認めるほど寛容な奴の方が少ないだろう。
「僕はこの学校である人物と友達になりたくていろいろ見て回っていったんだ。
「その人っていうのはどなたなんですか? もう出会えましたか?」
少ない情報量から、海端が炬燵に質問する。当人はしばらく難しそうな表情を浮かべ考えこんでいた。
「わからないんだ」
「へ?」
海端がきょとんとした表情を浮かべる。
「知り合いがその人物の特徴について何か難しいことを言っていたんだが、話が長くて右から左へと聞き流してしまったんだ」
特に悪気がなく言い張る炬燵をみて、その知り合いとやらに同情する。炬燵を見る限り、恐らく暖簾に腕押しだったんだろう。
「……どうするんだ?」
百代にそう訊ねるとしばらく考え込んでいたようだが、考えをまとめたようで炬燵の方へ向き直る。
「まあ、成り行きとはいえここで会ったのも何かの縁だし……歓迎するわ」
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