「それって、実際何をするんですか?」
意外だった。突然部室を訪れてきた初顔の少女から、如何ともせん、面倒な頼みがあるなんて、俺だったらすかさず断りの言葉を述べてだろうからな。
「特段難しいことをする訳ではないわ。生徒達から学業等悩みに対する疑問を私たちが解決してあげたり——一緒に取り組んだり——そういったことを目的に活動をしようと考えているところよ」
話している内容は大筋あっているが——等と付け加えているのは気になる。さすがに先程俺に話した様な文言をここでは使わないようだ。
「教師からも一室使用は許可されているの。あなたにとっても学生生活で好きに使える部屋が一つ増えるというのは有意義だと思うわ」
その言葉を聞いて海端はしばらく考え込む。
「……わかりました。協力します」
おいおい本当かよ、思わず心の中で呟いた。こんなに都合よく百代の思い通りになるなんて考えてもいなかった。
「英断ね! これであなたは名誉ある私活動の一員ね。悪いようにはしないから期待して」
当の百代は海端の手を握ったまま興奮気味に、最近ドラマで見たようなタップを踏むように小躍りしている。
話を続けていると先ほどまで海端と一緒に料理をしていた他の生徒が心配そうに海端に声をかけてきた。この部活を海端が辞めてしまうんじゃないかと危惧しているようだ。当然のことだろう。
「ただ……、今の部活は辞めなくても構わないでしょうか?」
「全く構わないわ。私もそこまで強制するつもりも迷惑も掛けたくはないから」
その言葉に海端と話していた生徒達も安堵の表情をうかべる。彼女、海端の人柄が良く、他生徒から人望も厚いのだろうと感心する。
百代とふと目が合い、あからさまに何か思い出したような表情を浮かべる。完全に忘れていたな。
「ああ、それからこいつは小綬と言ってね。私たちの仲間よ」
海端はこちらに向き直ると綺麗な姿勢で甲斐甲斐しく頭を下げた。
「海端粽(みはた ちまき)と申します。これからよろしくお願いします」
「……あ、ああよろしく」
改まって彼女と向き合って気付いた。参った。すごい美人だ。百代がすらっとしたモデルのような美人だが、海端はおっとりした大人っぽい雰囲気も纏っているが、子供っぽくもある透きとおる純真そうな瞳が印象的だ。ただ何より……先ほど見とれてしまったくらいスタイルがいい。こう言うと変態っぽいが、まあ俺も男だ許してほしい。
「あんた、顔に出てるわよ」
「な、なにがだ。初対面だから挨拶をしただけだぞ」
後ろから百代に的を射た言葉を投げかけられ、驚き焦り言葉を濁したが、百代はあきれた表情で「まあいいわ」と小言を呟いた。
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