女子からの「秘密」と言う突然の告白に一瞬目を丸くしたが、俺は努めて平静を取り繕った。
「なんだ秘密って、別に聞いてもいいけどな。俺、口は堅い方だし」
おどけつつも心の片隅では——もしかして愛に告白か——等と若干期待をしてしまったことは事実だ。健全な男子では当然の反応だと思いたい。
それに百代は傍から見れば俺が見た学校の女子の中では群を抜いて美少女だからな。こういう所は俺も男だなと思う。
「後戻りできないけど、良い?」
「一度言った言葉を引っ込めはしないぞ。俺も男だ」
そう、と百代が一息ついた。後戻りできないという言葉が気にはなるが、まあ深く考えないでおこう。
「私は毎日見てるわよ、あなたの言う宇宙人を」
「……」
「……そうだったのか」とは言わないぞ。何を言っているのだか全く分からなないのだから。
「とりあえず話を聞いて」
きょとんとしている俺の表情を意に介さず百代は続けてきた。
*
「ここに来たきっかけはね、私たちの惑星で観測された、地球での不可思議な観測について調査するためだったの」
「この宇宙では様々な事象の一つ一つに時間の歪みが生じているの。それは本来、生命体には認識できない無ともいえるものなの」
「ただ、この時間の歪みを、ある生命体の脳波が捉えてると思われる事象がこの惑星で確認されたのよ」
「これは今まで観測できる限り、この宇宙上ではなかった現象なのよ」
「そこでよ。その生命体と接触してその現象を確認することが目的で来たんだけど、まあ
それだけじゃつまらないじゃない」
「事前にこの星の書物を手に入れて少しは勉強してきたの」
矢継ぎ早に話を続ける百代に、ようやく割り込むタイミングを見つけた。
「勉強?」
「そう。特にここ、日本の書物が私の心を揺さぶったわ」
「そこに書かれているものは、私たちの世界にはない概念が多く記されていたわ」
「そして期待を大いに抱いてこの惑星、日本に来たの」
「少し時間がたったけど、何も面白いことがないのよ。事前に仕入れた書物からの情報だと、この区域、ここでは超能力や特異現象、超常現象が頻繁に起きているって書いてあったのに」
今までせき止めていたものが結界したかのように饒舌に喋っている。先ほどまでの百代の悲しげな表情は消えていた。
けれど今度は俺の方が悲しくなった。おそらく表情にも表れているだろう。
心の中で後悔の念仏を何度も唱えたい気分だった。百代がここまでエキセントリックな奴だとは思わなかった。
コメント